産学協同コンペ 道頓堀 Dōtonbori
折れ壁の積
石川 博那
木村 駿平
塩坂 優太

心地よく彷徨いながら商品に出会う商業建築
大都心の商業建築は集客のために、上層階の庭園やレストラン街、下層階の食品売り場など、店舗ごとに個性ある機能で魅力を出している。目的をもって入店したはずが、商品を探す過程で次々に購買意欲を掻き立たせる移動体験は商業建築を訪れた際の一つの楽しみでもある。
積層する折れ壁のずれが生む連続的ピロティ
本建築では、商業建築における建築の移動体験に焦点をおいた。<折れ壁を定める>建築操作で生まれた、平面的に折れ壁を潜る / 断面的に積層した壁のずれから登る体験が、外 / 内、商品を探し求める探索 / あてもなく出会う散策を反転させていく。
紙も折ることで自立するように、この建築の構造は、壁を2回折り曲げ、各階で4点の芯を共有することで、従来の断面的に壁面が連続する壁式構造の原則から脱却する。その結果生じた上下階における壁のずれは、間取りを自由にし、複層にわたるピロティを発生させる。そこでは質の異なる上下の空間が干渉されると同時に、一室として機能する。その干渉のバリエーションは<折れ壁を定める>方法次第で無限に存在し、動線は都市からGLピロティへ、そして中間階ピロティへと上昇しながら複雑化していき、ピロティは都市と商業の二重螺旋の交差点として、偶発的な場を提供するだろう。
<折れ壁を定める>だけの操作で生まれる現象の多様さが、移動体験にリズムを与え、心地よく彷徨いながら商品に出会える商業建築の構成をつくりだしていく。
<折れ壁を定める>こと
<折れ壁を定める>ことは、壁によって生まれるプラン・眺望・明暗・開閉・高低・内外・表裏を設計することである。他方が凹めば、もう一方はでっぱり、他方がオープンであればもう一方はクローズになる。この単一の操作は、壁を介した空間同士の依存関係を強めると同時に、複雑な環境を成立させている。
この建築では、複数の建築要素に割り当てられていた諸機能を、壁に詰め込むことで、①構造の耐力壁として、②空間の性質を創り出す装置として、③機能・動線・用途からなる計画を定めるものとして、壁が存在する。






