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産学協同コンペ 道頓堀 Dōtonbori 優秀賞

劇場を日常に -共助的建築による提案-

酒見 助
市原 元気
村上 幹太郎
住宅_田中_メイン.jpg

本作では、ピロティが持つ「街に対して閉じない内部の溢れ出し」という長所と、「上下階の繋がりが希薄」という短所をテーマとする。

敷地である道頓堀は江戸時代より芝居の町として栄えたが、近年は伝統芸能への関心の薄れや経営難から、劇場は減少し、芝居の町としての風景も影を潜めている。そこで、劇場建築の課題である低い稼働率を利用し、この過密都市において日常の滞留空間となる公園とハレの場である劇場を使い重ね、再び劇場をまちの日常とする都市公園型劇場を提案する。

まず、歌舞伎舞台の「せり」から着想を得て、全ての階を移動する可動舞台を取り入れる。舞台がない時、公園や図書館として日常的に開放されている空間に、舞台が帰着することで、そこは一転してハレの劇場へと変化する。可動舞台が劇場機能を上下に運び、かつ舞台がない時も吹き抜けとなることで、上下階の繋がりを生み出す。

次に、コンサートホールの音響板特有の形態から着想を得て、スラブの表裏関係に焦点を当てる。スラブ自体を音響板とし、その裏側である上階の用途をスケボーパーク等の、湾曲したスラブの形態に対応させることで、物理的には目に見えずとも、感覚的に上下階の繋がりを創出できる。上下階の断絶というピロティの短所を克服したスラブの表裏関係が、建築全体に広がる。

さらにこのスラブが、街に対しても影響を与える。外壁にスラブをかたどるような開口を設け、スラブの形態がファサードとして露出されることで、街ゆく人々は外観から各階の機能を認識できる。建築の造形が内部の活動を街へと溢れ出させることに寄与するのである。

この街の歴史である劇場が持つ構成に着想を得て、ピロティの短所を克服し、全ての階でピロティの利点を性質として持つことで、日常生活に寄り添う新たな劇場の在り方が生まれる。この都市公園型劇場は、街の歴史とピロティの共助的建築である。

京都工芸繊維大学  工芸科学部  デザイン・建築学科 武井研究室
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